視覚や聴覚と異なり、痛みの度合いを測定器で簡単に測る方法はまだありません。
痛みという感覚は情動を伴う感覚なので、痛みに対する不安や恐怖感などの影響を受けるからです。
解剖学的にもヒトが痛みを感じている時、情動を司る脳と痛み知覚を司る脳の両方が連携して機能していることが知られています。
実際に痛くないと思うことで、痛みを軽く感じる事を実証した研究があります
(PNAS : 2005 vol. 102(36) 12950-1295, Koyama et al)。
「痛いの飛んでけ」と唱えることで痛みを和らげる、昔から我々が本能的に行ってきた事を科学的に実証したすばらしい研究です。
さて実際に痛みを評価する際には、通常の問診、診察に加え
1.質問票に痛みの状況を記入して頂いたり、
2.痛み計(前腕に微弱な電流を流し、痛み知覚を測定Painvision)、温冷覚検査(QST)
などを用いたりしますが、
時間がかかりますので日常診療では毎回は行えません。
普段は
1.痛みを0(痛みなし)から100(最悪の痛み)までの数値で示したり、
2.フェイススケール(痛み度合いに対応して笑った顔から泣いた顔まで6段階の表情)で示したりなどの簡便な方法を用いています。
幸い日本語には痛みを表す言葉がたくさんあります
(ぴりぴり、ずきずき、ちくちく、ずーん、締め付けられるようななど、)。
受診される際には、
1.今現在の状況
2.治療前と比べてどう変わったか
3.将来痛みが減ったときどういう状況になりたいか
をご自分の言葉で表現して頂ければ、診断や治療に大変役に立ちます。